平成16年6月16日
厚生労働大臣 坂口 力 殿
                  自由民主党・高齢者虐待問題検討会
                    会 長     参議院議員 陣内 孝 雄
                    事務局長   参議院議員 南野 知惠子
                    事務局次長  衆議院議員  馳  浩

高齢者虐待問題への対応に関する要望
  高齢者虐待問題検討会では、「成年虐待防止に関する勉強会」の検討
の成果を引き継ぎ、深刻な社会問題となりつつある高齢者虐待の問題に関
し、有識者や関係省庁からのヒアリングを行うとともに、それへの対応につ
いて検討 してきた。
  先般、厚生労働省の委託調査として行われた「家庭内における高齢者
虐待に関する調査」の結果がまとめられ、本検討会においても厚生労働省
より報告を受けたところであるが、それを通じて、家庭内における高齢者虐
待の実態が浮かび上がるとともに、一部で深刻な事態を生じている事実、
高齢者虐待が生じる背景・原因の複雑さ、高齢者虐待への対応の難しさ、
高齢者虐待に関する認識及び対応体制の立ち遅れなどが明らかとなった。
  本検討会としては、自民党の同僚議員にさらに広く参加を呼び掛け、与
党を組む公明党とも協力しつつ、引き続き高齢者虐待の問題について検討
を行い、それへの対応について提言、要望等を行っていく所存であるが、こ
れまでの検討と「家庭内における高齢者虐待に関する調査」を踏まえ、高
齢者虐待 の問題について早急な対応を要する事項として次の諸点に関し、
介護保険制 度改革における対応も含め、必要な施策・措置を積極的に講じ
ていくよう要望 する。

1. 高齢者虐待については、当事者、それを発見しやすい立場にある医療・
  福祉等の関係者ともに、虐待そのものに関する認識が十分とはいえない
  状況にある。高齢者虐待についての認識を高めるため、国民の啓発を行
  うとともに、高齢者虐待を発見しやすい立場にある医療・福祉等の関係
  者、特に介護サービス従事者等に対し、教育、研修等の機会を通じるな
  どして、高齢者虐待の問題について周知を図る必要があること。
2. 高齢者虐待を発見しやすい立場にある者が虐待に関する情報を把握した
  場合に、その情報が関係機関に適切かつ確実に提供される仕組みを整
  備する必要があること。この点、家庭内虐待の場合については、介護サ
  ービス従事者等によって把握された情報が担当ケアマネージャーや、在
  宅介護支援センター、市町村保健センター等の機関に提供・通知される
  体制を整備する必要があること。
3. 高齢者虐待に関する相談窓口及び高齢者虐待が発見・把握された場合
  の対応体制について整備する必要があること。そのために、市町村等の
  取組を促進・支援するとともに、関係機関が連携して対応していくための
  ノウハウ等を集積し、それらが共有化されるような仕組みを構築する必要
  があること。
4. 高齢者虐待に関する対応においては、被虐待者だけでなく、虐待者に対
  するケア等も重要であり、そのために、介護負担の軽減のみならず、家族
  に対する相談支援等を含めた総合的なマネジメント体制を整備する必要
  があること。
5. 高齢者虐待については、施設内虐待をはじめ、いまだその実態等が明ら
  かとはなっていないところがあり、問題への適切な対応を行っていく上か
  らも、高齢者虐待の実態のさらなる調査研究を進める必要があること。

  なお、高齢者虐待に対する立法的な対応としては、再提出が予定されて
いる人権擁護法案(高齢者虐待を人権侵害とし、特別救済の対象として規
定)の早期成立を図ることも重要であり、高齢者虐待の問題については、保
健・医療・福祉の分野にとどまらず、多角的な対応が求められる。
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